子どもの食と深く向き合う保育園の試み
埼玉県鴻巣市に、「どんぐり保育園」と「どんぐりっこ保育園」という2つの保育園があります。この2園は開園以来30年間にわたって「手づかみ食べの離乳食」や「素材の味をいかした味つけ」「旬の食材を使った献立」「子どもたちと一緒に畑で野菜を育てて収穫する」など、子どもたちに豊かな食を伝えるためにさまざまな取り組みを行ってきた保育園です。
給食室
今回はどんぐり保育園の給食室に勤務する管理栄養士さんに、日頃どのようなことを考えながら給食を作っているのか、お話を伺いました。「私がここで勤め始めた頃から、創設者の清水フサ子さんにはたくさんのことを教わりました。学校で習ったカロリー計算の数字ばかり追いかけてはいけないよ、と声をかけられたこともありました。そうやって少しずつ、私はどんぐり保育園の給食を学んできたのです」そして、数年前に発行されたどんぐり保育園の給食便りを持って来られました。
子どもたちの食と向き合う姿勢を改めて考えさせられる文章でしたので、ここに紹介させていただきます。
【給食献立表のことば】(2013年3月)
「本当の“おいしい”って、なんだろう?」という疑問をいつからか持ち、献立を立て、調理に携わっていた今年度。6年前、『机の上の数字ばかり追いかけるのではなくて、目の前の子どもたちを見るんだよ』と教えてもらったことをきっかけに子どもたちに目を向けると、四季の中に生きる輝かしい姿が印象的でした。
栄養素の数字合わせを中心に献立を立てる方法を教わった学生時代の考えを一度置き、四季の恵みを軸にして捉えてみました。夏野菜は体を冷やし、冬野菜は体を温めてくれること。その季節の野菜は、次の季節を迎えうつ役割があることを知りました。
古くから日本人が食べてきた保存食や食べ合わせは“体にとって”も都合が良いことや、無駄なく消費できる知恵がつまっていることも知りました。
『おいしさ』は調味料の配合で決まるものではなく、食材を選ぶところからも決まると知ったのも、ここ数年のことです。それは決して高級なものを選べというのではなく、遺伝子組換でない飼料を食べて育てられた肉や、化学肥料等を使わず、手塩にかけて育てられた野菜を選ぶ方が、私たちの体も反応しやすいということです。
子どもたちがお散歩で摘んできた菜の花が食卓いっぱいに飾られ、『あそこの木にウグイスがいたよ』と教えてくれたり、暖かい日差しは初心を思い起こさせてくれます。
卒園していく年長さんと同じ年月とどんぐりで過ごした私も、成長できているといいなと思います」【給食献立表のことば】(2013年3月)より
土鍋いっぱいに野菜を煮る
どんぐりっこ保育園
どんぐり・どんぐりっこ保育園の食の取組みが、1冊の本になりました。
【『子どもの「手づかみ食べ」はなぜ良いのか?』好評発売中!】
※トップ写真は「野菜を育てて収穫する様子」