福島県で2015年に生産されたコメ約1050万袋のすべてが、年間を通じて国が定めた放射性物質の基準値を下回りました。年間を通じて基準値超えがゼロだったのは、2012年の検査開始以来、初めてのことです。除染や放射性物質の吸収を抑える農家らの地道な努力が実を結びました。消費者の懸念を払拭するため、県は今後も全量検査を続けて安全性をPRするとともに、低迷する価格の底上げや消費の拡大に取り組む方針です。
2015年産米の検査は、昨年8月20日から始まりました。「ふくしまの恵み安全対策協議会」によると、今年9月5日までに1049万7577点について調べたうち、国が定める放射性セシウム濃度の基準値(1kgあたり100ベクレル)を超えたものはなく、99.99%が測定下限値(1kgあたり25ベクレル)未満でした。
県産米の放射性物質の検査は、東日本大震災と東京電力福島第一原子力発電所事故があった翌年の2012年から行われています。農家の自家消費用のコメも含め、すべての県産米が対象で、早場米が出荷される8月下旬から、検査場に運び込まれた玄米を検査機にかけて放射性物質の濃度を測ります。基準値を超えたコメは流通からは隔離され、処分されます。
毎年、1000万袋(1袋は玄米30kg換算)以上を検査しています。基準値を超えたのは、検査が始まった12年産は71袋、13年産は28袋、14年産は2袋でした。
基準値超えが年々減少してきたのは、除染が進んだことや放射性物質の自然減衰に加え、水田の土壌の入れ替え、稲が土中の放射性セシウムを吸収するのを抑えるために塩化カリウムを施肥するなど、米作農家の地道な努力が成果をあげたためとみられています。
県水田畑作課の担当者は「農家や農協の皆さんが、県産米復活に向けて地道に取り組まれた結果です。基準値超えゼロは、消費者に安全性をPRしていく心強い材料になります」と話します。
消費者への浸透がカギ
課題は、消費者にどう浸透していくかです。市場取引価格も、全国平均との価格差は震災前よりも大きく広がった状態が続いています。震災後価格が下がったことで外食産業向けに販売されることが増えたそうで、今後、家庭や個人消費者にどうやってアピールしていくかがカギとなりそうです。
県や農協などは、首都圏や関西圏のスーパーやコンビニエンスストアに県産米を置いてもらうよう営業活動に取り組むほか、シンガポールやマレーシアへの輸出に加え、県オリジナル品種「天のつぶ」をこの夏、イギリスに初出荷するなど、海外への売り込みも進めています。
新米が食卓に上る時期になりました。福島のコメ復活に向けた取り組みが注目されます。
※トップ写真は全袋検査風景