松本一本ねぎは、江戸時代から信州松本で栽培されていた伝統野菜で下仁田ネギと同じ加賀郡に属する品種。耐寒性の強い太ねぎで、白い部分が長く根元が曲がっていて、甘さととろみがある舌触りが特徴だ。
曲がった分だけ甘くなる!
春に苗を植えた後、真夏の炎天下、お盆のころに成長したねぎを掘り起こし、「植え替え」を行う。その際、畝(うね)に立てかけたまま土を掛けて斜めに寝かせて植える。
JA松本市ねぎ部会の青木秀夫部会長は「植え替えを行うと、それまでの根が枯れて新しい根が出てきます。つまり新しく生まれ変わるのです。寝かせたねぎは真上に伸びようとし、根元が曲がって育ちます。ストレスがかかって甘味が増し、やわらかくなります」と解説する。栽培期間が普通のねぎより半年も長いため、断面は層が重なり密になっている。
松本一本ねぎの断面
松本一本ねぎは一般の長ネギの平均値と比較して、抗酸化力(老化や生活習慣病の原因となる活性酸素を除去する力)が高い。
12月14日には松本市で「野菜・果物の機能性シンポジウム」が開かれ、菅谷昭市長は「松本一本ねぎをはじめ松本産の野菜・果物の機能性=健康を切り口にブランド化し、市が推進する健康寿命延伸につなげていきたい」と抱負を述べた。
松本一本ねぎは加熱すると甘さが増すので、すき焼きや鍋物に向く。焼くという調理法が最も抗酸化力を高めるため、焼いたねぎに豚肉を巻いたり、みそ焼きにして他の具材と合わせ、どんぶりにしてもいい。
一本ねぎの「ねぎご飯」
収穫期は11~12月。販売期間は1月前半ころまで。土のついた状態のままだと、春先まで日持ちする。
例年、「全農長野 僕らはおいしい応援団」で産地直送も受けつけているが、人気商品のため今年は売り切れ。全農長野によれば、「松本一本ねぎは、曲がっているため流通に乗りにくく、都会の食品店ではほとんど扱っていない」とのこと。季節商品ではあるが、松本市内のスーパー「アップルランド」や産地直売所「アルプス市場」、「いまい恵みの里」などで買える。観光で訪れた際は、ぜひ気に留めていただきたい。