沖縄はもう「長寿の県」ではない!?
世界保健機関(WHO)が発表した「世界保健統計2011(World Health Statistics 2011)」によれば、日本人の平均寿命は83歳。日本は世界一の長寿国です。長生きができるということは、喜ぶべきことです。
日本の中でも、長寿で有名だったのは沖縄県です。都道府県別の平均寿命を調べた厚生労働省の統計データを見ると、1985年は男性76.34歳、女性83.70歳で、いずれも沖縄県が日本一です。ところが、2005年のデータを見てみると、男性78.64歳、女性86.88歳。女性は依然として1位ですが、男性は25位くらいまで下がっています(※編集部注/厚生労働省の2012年版の最新データでは、男性30位、女性3位とさらに下落)。現在では、「沖縄の人が長生きである」というのは、すでに定説ではなくなりつつあるのです。
では、なぜ沖縄の男性の平均寿命が、わずか20年の間にそれだけ下がってしまったのでしょうか? 平均寿命を下げる最大の要因は、若い人たちの死亡率の高さです。今、沖縄では働き盛りの男性の疾患が、深刻な問題にもなっているのです。
その理由は、様々な調査によって、明らかになっています。最大の原因は、沖縄の人たちの食生活の激変です。
アメリカ人の影響
古くから沖縄には「医食同源・薬食同源」の思想がありました。毎日の食事は医療や薬と同じ。体にいいものを食べ続けることによって、病気にならない健康な体がつくられるという考え方です。その食文化を、沖縄の人たちは琉球王朝の時代から守り抜いてきたのです。
ところが、昭和20年の敗戦によって、沖縄はアメリカに統治されました。それにともない、多くのアメリカ人が沖縄に入ってきて、沖縄の人たちの生活環境は一変しました。言葉は英語になり、お金はドルになり、自動車は右側を走るようになります。私も泡盛の研究のために、昭和四四年にパスポートを持って沖縄に行ったことがありますが、そこで見た街の風景はアメリカそのものに映ったものです。(つづく)
小泉武夫
※本記事は小泉センセイのCDブック『民族と食の文化 食べるということ』から抜粋しています。
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