発酵文化推進機構主催、第1回「発酵食品実地研修」ツアーレポート

カテゴリー:食情報 投稿日:2019.12.14

2019年11月16(土)~17日(日)の2日間にわたって、発酵文化推進機構による第1回「発酵食品実地研修」が長野県木曽町で開催されました。発酵文化推進機構が運営する「発酵の学校」で「発酵食品ソムリエ」の資格取得者が実際に発酵食品を製造する蔵を見学して回り、木曽の名産品「すんき」作りの体験も行いました。

木曽地方の名産品「すんき」

 

ツアー内容

11月16日(土)

・すんきそばと長野県の郷土料理五平餅の昼食

・すんき博士・岡田早苗先生の「すんき」講義

・「すんき」づくり・赤カブ漬け体験

・宿泊(夕食は木曽町発酵ディナーと地酒・ワイン)

 

11月17日(日)

・木曽町地域資源研究所(見学)

・小池糀店(見学)

・七笑酒蔵(見学)

・中善酒蔵(見学)

・肥田亭(昼食)

 

乳酸菌発酵だけで作る

「すんき」とは、赤かぶの葉を乳酸菌発酵させた、塩を使わない木曽伝統の漬物です。赤かぶの収穫に合わせて11月~3月に作られるすんきの歴史は古く、元禄年間(1688年頃)松尾芭蕉門下の句会で、芭蕉と弟子の凡兆が木曽のすんきを詠んだ一句が残されていることから、330年前にもあったのではとされています。

漬け物でありながら塩を使わず乳酸菌発酵だけで作る世界的にも大変珍しい漬物ですが、木曽以外の地域に出回るようになったのはここ5、6年のことです。それ以前は赤かぶのかぶの部分を甘酢漬けにしたものが出荷され茎葉の部分は処理していたのです。現在では茎葉を使用する「すんき」の方の需要が高く、かぶの方が余ってしまうそうです。

岡田早苗先生

 

今回のツアーに同行いただき「すんき」の講座も行っていただいた、すんき博士として知られる東京農業大学名誉教授であり、木曽町地域資源研究所所長の岡田早苗先生によると、「すんき」は無塩で食物繊維も豊富な上に植物性乳酸菌の有効性が健康面でも注目されています。整腸作用や抗がん作用、アトピーなどの抗アレルギー作用や免疫を高めるなどの効果・効能が期待されているのです。

 

実際に発酵の現場に触れることの大切さ

今回のツアーでは他にも、木曽町の糀(こうじ)店や酒蔵も訪問し、蔵を見学しました。発酵食品ソムリエの資格を持っていても多くは発酵の現場を見るのは初めての方が多く、実際に糀や味噌、酒造りに携わる蔵人さんからの説明を受けることで、講義で習った知識がより身につくという意見が多く聞かれました。その土地その土地に生きている目には見えない微生物のチカラによって作られる発酵食品の現場を訪ねることは発酵のことをより深く知る機会になることは間違いないと思います。

また、蔵人の思いや作る姿に触れることでより応援したくなりました。木曽の方はみな温かく優しく、郷土で育まれてきた発酵食品を愛している思いがひしひしと伝わってきました。

 

ツアーの時期はちょうど紅葉が見ごろでしたが、冬にはすんきが最盛期となり「すんきコンクール」なども行われ、スキー場開きもあります。春は蔵開き、夏には奇祭「みこしまくり」などが行われます。ぜひ「はっこうのまち」信州木曽町を訪ねてみたらいかがでしょうか。

主催者の発酵文化推進機構では、今後も同様のツアーの企画を検討していくということなので、ぜひとも楽しみに待ちたいものです。

 

取材・文:長谷川賢吾 / 発酵食品ソムリエ。株式会社かもし堂代表取締役。発酵食品の普及に関する様々な企画を打ち出す元テレビ番組制作ディレクター。

撮影:神山美代子

 

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この記事を書いた人

編集部
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