てらやま農園の米作り⑤稲刈り

カテゴリー:食情報 投稿日:2019.11.12

関東から東北にかけて甚大な被害をもたらした台風19号から数日後。10月中旬のある日、てらやま農園で最後の稲刈りが行われました。

小泉武夫センセイは常々「日本の食料自給率は40%しかなく、外国に食べものを頼っていると食の安全が保障できない。食は地産地消が本来のあるべき姿なのに、日本の食料は現在危機的状況に追い込まれている」と警鐘を鳴らしています。

そこで編集部では、食の安全にこだわるてらやま農園に半年かけて密着取材させていただき、改めて日本の主食がどのように作られているのかを見つめなおしてきました。田植え前の土づくりから取材してきた可愛い稲たちが、ついに刈り取られる日を迎えたのです。

台風に負けずに実った稲

 

工程1:稲刈りから乾燥機へ

台風19号で緊急取材させていただいた稲たちは、数日経ってすっかり乾いていました。これなら無事に稲刈りできそうです。

てらやま農園では通常、出水後に早生の品種で積算温度1000~1100度、中生の品種で1100~1200度、晩稲の品種で1200~1300度を目安として稲刈りを行っています。とはいえ、穂の様子を見れば経験で刈り時がわかるそうで、ほんの少し早めに刈ると一番美味しくいただけるのだそうです。

稲刈り機で刈った稲は、乾燥機にかけられます。稲刈りは午前から行いますが、午前に刈った稲と午後に刈った稲では、水分量に2%ほど差が出るといいます。そこで午前に刈った稲はすぐに乾燥機に入れ、午後に刈った稲は後から別の乾燥機に入れるので、結果的に同じ時間に程よい水分量まで乾燥できるのだそうです。

後ろに大きく3つ並ぶのが乾燥機

 

寺山將之さん(以下、寺山)「うちの乾燥機はゴミが飛んで空気を汚さないように、排風に水のシャワーを噴霧して、乾燥機から出るゴミやホコリを取り除いています。稲を乾燥させる際に出るゴミは主にもみ殻等なので、うちの農園で採れる野菜の肥料にして再利用しています。だからうちの野菜は安全で美味しいって、直売所で大評判なんですよ」

乾燥機の裏側に並ぶゴミ取り機

 

工程2:もみすり

乾燥機で乾かした稲は、もみすり機に移動します。ここでもみ殻を除去して、玄米になります。

もみすりで出たもみ殻は、今年の米作りを通して「出来が良くなかったな」と思う田んぼの箇所に撒いて、土になじませます。もみ殻には「けい酸」という成分が豊富に含まれていて、土壌改良に良いのだそうです。けい酸は土に残りやすく、もみ殻は小さくて腐敗しやすいので、成分だけが土に残ります。

 

寺山「もみ殻を燃やしてしまえば簡単ですけど、煙が公害になります。肥料として再利用すれば、撒くのは大変だけど良い土になります。だったらきちんと使いたいじゃないですか」

てらやま農園のもみずり機

 

工程3:選別

もみすりして出来上がった玄米は、選別機にかけられます。選別機はザルのようなもので、網目を調整して玄米に混ざったゴミや石等を取り除きます。

その後、てらやま農園では「色選」と言って、カメラで色を見て、異物があれば空気をピンポイントでピュッとあてて除去する工程があります。

 

寺山「色選機を持っていない農家もありますが、これは等級にかかわるので非常に大切な工程です。せっかく最適な水分量まで乾燥した玄米ですから、純粋に空気だけを出せる特別なコンプレッサーを使用しています」

色選機を扱う寺山將之さん

 

工程4:計量・袋詰め・出荷

良質な米を選別した後は、計量機で重さを計ってから袋詰めすれば、もういつでも出荷できる状態です。もちろんすぐに出荷する分もありますが、手元に残しておいて、注文が入ってから精米して出荷する分もあります。手元に残しておく分の米は、品質が落ちないように大きな冷蔵庫に入れて管理しています。

出荷まで温度管理して品質を保つ

 

この大きな冷蔵庫が置いてある蔵が、趣のある佇まいです。聞くと、この蔵は戦後、將之さんのおじいちゃんが裏の山から杉を切ってきて作ったのを覚えているそうです。

將之さんのおじいちゃんの代から変わらず守り続けている蔵がありながら、最先端の機器も取り入れて環境と品質に配慮するバランス感覚。これが現代の、世界の先進国である日本の米作りの一つの側面なのだと実感しました。

冷蔵庫は、戦後からある蔵の中

 

てらやま農園の取材を通して、日本の農家が守り続けてくれている主食・米の大切さを改めて噛み締めた半年間となりました。お忙しい作業の間に度重なる取材に対して、「小泉センセイのサイトとあれば断れないな!」と、嫌な顔一つせずに丁寧に教えてくださった寺山將之さんをはじめとする寺山家の皆様に、この場をもって改めて感謝申し上げます。

 

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この記事を書いた人

編集部
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