てらやま農園の米作り④「有効分けつ期」と落水、「間断かん水」へ

カテゴリー:食情報 投稿日:2019.09.14

令和元年8月下旬。「てらやま農園の稲にそろそろ穂が出てきた」との連絡を受けて訪ねてみると、7月上旬の取材から1周りも2周りも大きく育った稲が出迎えてくれました。寺山將之さんにお話を伺いました。

(左)7月上旬 (右)8月下旬

 

田んぼを乾かすのはなぜ?

Q記録的な日照時間の少なさだった7月から一転し、8月は連日猛暑が続いた埼玉県。冷害も高温障害も同時に起こりそうな難しい気候でしたが、てらやま農園の稲は特に問題なかったのでしょうか?

問題なく育っています。じつは稲は賢いですから。今年は日照時間が少なかったから、稲が自分で葉の数を減らして、穂の栄養に回したようです。そのため例年より葉の数が少ないのですが、予定より2~3日遅れた程度で落水日を迎えました。

 

Q落水日とは何ですか?

田植えをしてからしばらくは「有効分けつ期」と言って、稲がどんどん分かれて数が増えていくのです。そして穂がなりやすい数に達したら「落水」といって、一度田んぼの水を落として、土が軽くひび割れる程度まで乾かします。これが落水日です。

 

Q落水日が例年と2~3日しか変わらなかったということは、予定通りに成長したということなのですね。落水をするとどうなるのですか?

落水すると「分けつ」が抑えられるので、ちょうど穂が出やすい稲の量で止めることができるのです。それに一度田んぼから水を抜いて乾かすことで、水分を摂取しようと根がより深く張るようになり、肥料を撒いても吸収効率が良くなります。ただし、乾かし過ぎると稲が弱くなるので、これも程よい加減が必要です。

 

高温障害を防止せよ!

Q今、田んぼを見たところ水が入っていたようですが、落水の後はまた水を入れるのですか?

はい。一度落水した後は、「間断かん水」と言って、土が乾いたら水を入れていきます。8月になると酷暑・猛暑日が続くので、日中で水が蒸発してしまいます。ですから毎日夜になると冷たい井戸水を入れて冷やすようにしています。井戸水で冷やすことで、高温障害の予防になるんです。

最新の機械で井戸水を汲み上げる

 

Q高温障害ですか?

そうです。猛暑日が1週間も続くと、稲が高温障害を起こしてしまいます。高温障害になると、収穫量も米の品質も著しく低下してしまうのです。それを防ぐために、夜間に井戸水でじっくり冷やすようにしています。

 

Q井戸水はそんなに冷たいのですか。

触ってみますか?

井戸水を出してくださいました

 

ここの井戸水は、年間を通して16℃で安定しています。真夏に触ると冷たいでしょう?
だから、暑かった日の夜は井戸水を出しながら田んぼの水を落として、「かけ流し」にすることもあるくらいです。

 

Qこの辺りの井戸水の水質はどうですか?

農家としては、井戸水がきれいだというのが本当に恵まれた環境だと感謝しています。水質検査にも出していますが、くみ上げてすぐなら飲用水として使えるレベルできれいなんですよ。

 

質の良い米作りへの思い

米の味は、水に大きく左右されます。この地域は豊富な井戸水に支えられて、品質の高い米作りができているのです。

 

Qここまで取材をしてきて、てらやま農園は米の品質に非常にこだわった農業を営んでおられることがひしひしと伝わってきます。そのこだわりの気持ちは、どこからくるのでしょうか。

やっぱりね、「地域の子どもたちに、ちゃんとしたものを食べさせてあげたい」という思いが強いからです。うちの米は地産地消を基本としています。取れた米は新鮮なうちに、地域の皆さんに食べていただきたい。だから地域の保育園や小学校に米をたくさん卸しているのです。

埼玉県S-GAP実践農場に認定

 

Qてらやま農園と出会ったのも、5分づきの玄米を保育園に卸している珍しい農家さんがあると耳にしたことがきっかけでした。

正直言ってね、私たちみたいな年寄りになったら何食べたっていいんですよ(笑)
私は3人の孫と同居していますが、育ち盛りの子どもたちに、「確かに安全だ」と胸を張っていえる米を食べさせてあげたいじゃないですか。それが私の一番のモチベーションです。

 

当サイト監修の小泉武夫先生も、地産地消(地元で生産した食料を地元で消費する)を推奨しています。地産地消の大きなメリットは、つくった人が見えるという点にあり、食の安心・安全を考えたときに、非常に大切なことだと常々発言しています。

また、地元でとれたものを食べないでいると、住んでいる土地への愛着も湧いてこないものです。「子どもの頃に口にするふるさとの食べ物は、強い郷土愛となって心に残るものだ」とも。てらやま農園の良い米作りに対する深い思いに感銘を受けた取材となりました。

 

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この記事を書いた人

編集部
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