なぜ日本人はインスタントラーメンが好きなのか
インスタントラーメンが最初に街に登場したのは昭和三三(一九五八)年のことである。湯をかけるだけで、ラーメンが手軽に食べられる即席性が受けて、爆発的な人気を呼び、インスタント時代の原動力となった。
もともと、アメリカの余剰小麦粉の利用法のひとつとしてあみだされたものであるが、このインスタントラーメンが大ヒットした背景には、日本人独自の食風習が少なからず影響していたことは確かである。それは、日本人のだれもが好んだ支那そばの存在と、早飯食い(はやぐい)のうえに間食をとり入れる食態などとピッタリ合ったものだったからだろう。また、安価で手軽な点と、折から出現しはじめたスーパーマーケットに、実によく適した商品であったのも一因である。
味噌は知恵の賜物
インスタントラーメンやヌードル、そして、インスタントコーヒー(一九〇一年に日本人が最初に発明したといわれる)という、今日では全地球的に普及した食べものを発明した日本には、実は昔から数多くの即席食があった。
糒(ほしいい)や焼米(やきごめ)は、急場には即座に口にすることのできる非常時の主食であり、葛湯(くずゆ)や懐中汁粉(かいちゅうじるこ)(乾燥した餡(あん)を最中(もなか)の生地で包んだもので、湯を注ぎ、かき混ぜれば汁粉になる)なども即座の飲みものとなって重宝された。
日本人の考え出した最も知恵のある即席食は、味噌かもしれない。いつまでも、保存がきき、湯で煮られた野菜や芋の汁にこれを加えただけで、立派な副食としての味噌汁ができ、粒食主食型の日本人を大いに助けてきた。ほかにとろろ昆布、蒟蒻(こんにゃく)粉、麩(ふ)など即席食は数々ある。(つづく)