一度食べたらやめられない、山陰地方の郷土食「イカの麹漬け」

カテゴリー:漬物 投稿日:2018.01.10

かつて鳥取のとある酒蔵さんより、「お酒のつまみにおいしいですよ」と一緒に送られてきたのが「イカの麹漬け」。ほんのりピンクがかった塩辛のようなその食品は、見た目はものすごく地味で、店で売っていても知らなければ手に取らなかったと思います。うーん、なんだろうなぁ……と最初はそれほど心惹かれず。でもまあちょっと味見をしてみたら、「えっ?! うわっ! なにこれ、やめられん!!」。

 

主に鳥取県と島根県の出雲地方、また一部兵庫県の日本海側などで食べられているようです。雪に閉ざされ食料が手に入りにくかった山間部に住む人々の冬の保存食として、昔から各家庭で作られていたそうです。それ以来、鳥取や島根で気をつけて見ていると、普通にあちこちで売られていることがわかりました。大手メーカーから、小さな商店や旅館などがお土産品として作ったものまでありました。

 

メーカーによっては、キュウリなどの野菜が入っていたり、柚子を効かせていたり、それぞれオリジナリティを出していました。地元の人は、あそこがおいしい、など各自お気に入りがあるようです。いろんな人に聞きまわっていると、島根県の出雲大社からさらに奥へ向かった海沿いにある、日御碕灯台の土産物店で、おいしいイカの麹漬けを作っているという情報を得たので、現地へ行ってみました。

日御碕灯台の土産物街

 

鄙びた風情の土産物店が並んでいます。店内には、貝の置物やアクセサリーなどがザクザク売られており、こんなところにあるのかなあ?とやや不安になります。

「いか糀漬」を作る古島商店

 

あ! ありました。看板に糀漬と書いてあります。「糀」の字を使っていますね。

古島商店の古島忠衛さん

 

店を営む古島さんご自身が作っています。もう30年以上続けているそうです。地元で水揚げされたシマメイカ(スルメイカのことを、この地域の人々はそう呼びます)を、ここでは写真のように洗濯物干しに数日干して、パリパリに乾燥させます。生のイカではなく、干したものを使うんですね。

干して細めの短冊状に切ったイカ

 

干したイカを細く刻み、米麹、醤油、焼酎を混ぜたもろみに漬け込みます。加える材料はそれだけ。シンプル! 完全無添加です。漬けたら1週間ほど熟成させます。その他詳しいことは秘伝だそうで、あまり教えてくれませんでした。独自の方法があるようです。実は古島さんの奥様でさえ、本当の作り方を知らないそうです。夜一人で作業場にこもり、作っているところを決して見せてくれないのだとか。

 

作るのは寒い時期だけで、11月から4月まで。それ以外の時期は基本的には販売もしてくれません。麹を生かしたままなので、気温が20℃以上上がると発酵が進んでしまい、味に影響が出るからだそうです。とてもこだわって、大切に作られています。古島さん一人で作っているので、できる分量も少量です。

イカの麹漬け

 

見た目は塩辛に似ていますが、麹で漬けているのでそれほどしょっぱさはなく、まあるくふくよかな甘みと旨みがあります。一旦しっかり干して旨みを凝縮させたイカは、程よく調味料が浸透し、麹による発酵作用もあって、ふかふかと柔らかい食感で、噛むほどに奥深い旨みが染み出てきます。塩辛は苦手だという人も、これは食べられる、という人が多く、むしろやみつきになってしまいます。お酒のアテとしてはもちろん、ごはんと一緒に食べてもいいし、パスタと和えるのもおすすめです。

はんぺんに乗せてつまみに

 

四角く切ったはんぺんにシソと一緒に乗せると、パーティーにも良さそうなカナッペ風のつまみになりました。鳥取県の特産品「豆腐ちくわ」を輪切りにして土台に使うのも良いです。

 

【古島商店】

島根県出雲市大社町日御碕1481-8

0853-54-5055

 

写真・文:江澤香織

ライター。食・旅・クラフト等を中心に活動。著書「山陰旅行 クラフト+食めぐり」「青森・函館めぐり」「酔い子の旅のしおり」等。酒蔵や酒場を中心に巡るツアーやイベントも主宰。発酵マニアで各地の発酵食品の現場を訪ねることはライフワークのひとつ。

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この記事を書いた人

編集部
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