国を愛する心を育むものは【小泉武夫・食べるということ(8)】

カテゴリー:食情報
投稿日:2017.05.31

 「アグリカルチャー」の深い意味

 食育とは、民族の伝統である食文化を伝承することなのです。農業を英語でアグリカルチャーといいます。なぜ「カルチャー(文化)」が下に付いているのか。それは、生命維持産業である農業が、民族の守るべき食文化として次の世代に受け継がれるものだからです。ところが、現代の日本では食を文化として教えなくなってしまった。子供たちの食の乱れというのも、そこに大きな原因があると私は思うのです。

 

 「畑」と「畠」の違い

 2011年4月から、日本の小学校5、6年生に英語の科目が義務化されました。英語の勉強が悪いというつもりはありませんが、私は思うのです。英語を学ぶよりも先に、子供たちはもっと自国の文化をきちんと学ぶべきではないか、と。

 たとえば漢字ひとつを見ても、読み書きだけが教育ではないはずです。「はたけ」という字には、「畑」と「畠」の2種類があります。どちらも日本で生まれた国字ですが、意味の違いがわかりますか? 「畑」は焼畑のことで、火が入った「古いはたけ」という意味です。「新しいはたけ」は、まだ焼かれていないから白という字がついた「畠」で表すのです。

 

 「麹」と「糀」の違い

 「こうじ」という漢字も、一般的には「麹」が使われますが、これは中国で生まれた字です。中国では麦からこうじをつくりますから、部首に「ばくにょう」が使われますが、日本ではこうじを米からつくります。米に花が咲いたようにこうじ菌の胞子がつく。その様子を見た江戸時代の日本人は、「糀」という素晴らしい国字をつくったのです。本来なら、「麹」ではなく「糀」を使うのが正しい日本語なのですが、そういう文化を学ぶこともなく、子供たちに英語を教えようとしているのが今の日本の教育なのです。

 

 本当の国際人を育てる

 国際人として生きていくためには英語が必要だという意見もありますが、自国の文化も知らないで、はたして本当の国際人と呼べるでしょうか? 国際人とは、愛国心を失うことなく世界という大舞台で活躍できる人間のことです。いくら食育基本法を制定しても、大人が子供たちに食の文化を伝えることができなければ、日本の食育の先に国を愛する子供たちは育たないと、私には思えてなりません。

小泉武夫

 

※本記事は小泉センセイのCDブック『民族と食の文化 食べるということ』から抜粋しています。

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この記事を書いた人

編集部
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