自然界の驚くべき共生関係(1) 【小泉武夫・食べるということ(48)】

カテゴリー:食情報
投稿日:2018.05.16

 日本人と大豆の歴史

 もう50年近くも私は日本の食文化を研究してきているわけですが、痛切に感じるのは、われわれ日本人は「大豆によって救われてきた」という事実です。日本人は稲作民族ですから、もちろん米が日本の食を支えてきたといえます。ですが、その米も大豆の恩恵を多大に受けているということは、あまり知られていません。

 日本の稲作の起源には諸説ありますが、縄文時代の遺跡から稲の細胞組織の痕跡が発見され、遅くとも弥生時代には米の栽培が定着していたとされています。

 一方、大豆は秋田県の小森山遺跡や山口県の安田岡遺跡などから出土していることから、弥生時代後期にはすでに栽培されていたことが判明しています。

 奈良時代には、味噌も、納豆も、豆腐もつくられていました。これらの大豆食品は、もともと中国から伝えられたものだと考えられていますが、今の私たちが食べている味噌や納豆と、中国の味噌や納豆とは違うものです。たとえば、中国から伝わった納豆は「塩辛納豆」といって、茹でた大豆を発酵させてから乾燥したもの。納豆菌を使った「糸引き納豆」は、日本人が独自につくり出した民族食なのです。

 

 大豆が「畑の牛肉」と言われる理由

 大豆が米にも負けない貴重な食べ物として育てられてきた理由は、その栄養価の高さにあります。大豆は「畑の牛肉」とも言われますが、含まれているタンパク質は16〜17%。牛肉のタンパク質が17〜18%ですから、本当に大豆は牛肉に匹敵するタンパク源なのです。

 大豆は植物です。植物の多くは繊維と水が主成分です。つまり、タンパク質をたくさん含むということは、植物の世界ではとても不思議なことなのです。では、なぜ大豆には牛肉並のタンパク質が含まれているのか。これは、自然界の驚くべき共生関係が成し遂げた結果なのです。

小泉武夫

 

※本記事は小泉センセイのCDブック『民族と食の文化 食べるということ』から抜粋しています。

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