イスラム教の戒律にのっとった原料・製法でつくられた「ハラル」対応のチーズの開発を、北海道の帯広商工会議所が中心となって進めています。国際協力機構(JICA)とマレーシアのケダ州と協力し、7月中にも試作品の完成を目指しています。安定供給が軌道に乗れば、マレーシアから、さらにイスラム圏へと国産チーズの市場が広がることになります。
帯広商工会議所はJICAの草の根技術協力事業として、2013年からマレーシア北部のケダ州、タイのチェンマイ県で地域のブランド品づくりによる農産物の付加価値の向上と、現地と十勝地方との中小企業の交流・協力の拡大を進めてきました。
ケダ州では十勝地方の企業の技術指導で、現地企業による「ハラル大福」の生産・出荷が今年3月から始まり、日系スーパーによって全土で売り出されました。「全く想像していなかったくらいの好評ぶり」で、生産設備の増強も検討しているそうです。
ケダ州ではまた、乳製品加工に力を入れていきたいとの意向があり、チーズをはじめとした乳製品製造が盛んな十勝地方の商工会議所として協力することになったそうです。赤道に近いマレーシアでは、乳牛の乳量が落ちるために生乳の確保が難しく、現地で販売されている乳製品の大半はニュージーランドやオーストラリアのハラル対応品です。
今年2月、十勝産チーズの試食会をケダ州で開催して好評を博しましたが、ハラル対応の製品かどうかへの関心も高かったそうです。そこで、チーズづくりに欠かせない、ハラル対応の凝乳酵素(レンネット)を現地から取り寄せて、十勝の工房でチーズの試作品をつくることになりました。
マレーシアは国をあげてハラル産業の育成に力を入れており、同国の認証を得ることができれば、イスラム諸国のほとんどへの輸出が可能となります。世界人口の約4分の1、18億人の市場に向けた販路が開けることになります。
ケダ州では、このハラル対応チーズを使った焼き菓子など地元ブランドづくりも視野に入れています。帯広商工会議所の武田光史・産業振興部長は「地域の産業の活性化に貢献するとともに、ハラル対応のチーズが安定的に供給できるようになれば、国産チーズの商圏の拡大にもつながる」と話しています。