京都の釣り好きは、週末を待ちかねて琵琶湖に出かけます。小ブナ、モロコ、小アユなどが「大漁」だった時の定番料理が、番茶で煮る甘煮。
番茶とは、成長して固くなった葉や茎をもまずに乾燥させ、焙じたもので、独特の香りがあります。お値段が安く、カフェインが少ないので、以前はどこの家庭でも大きなヤカンに煮出しておき、大人も子供も日常使いのお茶として飲んでいたものでした。ただし、お客さん用には、お煎茶です。
この番茶で魚を煮ると、タンニンの働きで、魚の臭みが取れ、骨まで柔らかくなります。
最近では、「京番茶」として売られているようですが、手に入らない場合は、ほうじ番茶で代用してください。
頭も骨も、おいしく食べられますよ。
大きな葉や茎もある番茶
イワシの番茶甘煮の作り方
味付けの前に、濃く煮出した番茶で、魚を1時間ほど煮ます。火にかけておくだけなので手数はかかりません。柔らかくしてから、甘辛いタレをからめるように煮含ませます。タレは少量で良いので、塩分や糖分を少な目にすることができます。
今回は、6月~9月が旬の真イワシを使いました。長さ20㎝ほどで、1尾55円(税込み)。冷蔵庫で一週間ほどもちますので、作り置くと重宝します。
【材料】
・京番茶:20g
・水:1000ml
・イワシ:6尾(540g)
・酒:30ml
・みりん:30ml
・砂糖:30g
・しょうゆ:30ml
【作り方】
1./水を沸かし、沸騰したら番茶を入れて、3分ほど煮出す。
2./イワシの内臓を取り、よく洗っておく。
3./フライパンにイワシを並べる。網じゃくしなどで葉や茎をこしながら、1の番茶を注ぎ入れる。
茶色の番茶で煮る
4./強火でいったん煮立てる。アクを取って、弱火にし、落とし蓋をして1時間ほど煮る。
5./煮汁を捨て、酒、砂糖、みりん、醤油を入れる。落とし蓋をして、弱火でからめるように煮含ませる。途中で一度、魚の上下をひっくり返す。
タレをからめるように
6./器に取り、残ったタレをかける。作ってすぐよりも、自然に冷めてからのほうが味がしみておいしい。
最後にタレをかけて艶良く
●他の魚で作る番茶甘煮
小ブナ、モロコ、アユ、ワカサギ、ニシンなどでも作れます。魚の分量によって、上記の割合で調節してください。番茶は、魚がかぶるくらいの水量にして、1時間ほど煮ること。
写真はワカサギです。ワカギは冬の魚と思われていますが、1年を通して流通しています。夏のほうが脂は多いとか。茨城県では、霞ケ浦などで獲れる夏のワカサギを「ナツワカ」と名付けて売り出しています。
ワカサギの番茶甘煮
福田恭子/フリーランス・ライター。京都市生まれ。ドイツ・テュービンゲン大学で学ぶ。文化を専門として茶道家元や京都の老舗料理店の広報誌編集長を務め、国内各地や世界50カ国で取材。