【あんしん・あんぜん食材図鑑】ぎんなん

カテゴリー:食情報 投稿日:2015.11.22

今しかできない、ぎんなん集めのススメ

 秋も深まっていちょうの葉が黄色く色づいてくると、その美しさにひかれてつい上ばかり見ます。すると「クサイッ!」目にあう…そう、つい下に落ちているぎんなんを踏んでしまうと、あの強烈なニオイ爆弾がさく裂するのです。

 しかし、あのニオイ爆弾、つまりぎんなんが熟して落ちる期間は短く、晩秋の一時期に限られます。

 

ぎんなん採集の注意点

 ぎんなんはもちろん購入することもできますが、晩秋の今しか落ちていないからこそ、ぎんなん拾いに挑戦してみましょう。ニオイに負けず自分で採集した旬のものはまた格別の味わいです。ただし、ぎんなんの成分で皮膚がかぶれる場合がありますので十分注意してください。その他注意点としては、

1/神社仏閣などの敷地内では係の方に一声かける。

2/長靴、ゴム手袋、ニオイが付着しにくい服装、ニオイを遮断できるビニール袋などを用意。直接肌にぎんなんが触れないような重装備で。

3/電車やバスなどの公共交通機関は利用しない。いくらニオイを遮断したつもりでも、密閉された空間では凶器に近いほどの威力があり、乗客が周りからいなくなるはずです。

4/拾ったその場で果肉を剥かない。それこそニオイで大迷惑です。

 

ぎんなんの失敗しない調理法

 ぎんなんをいただくには、まずあの強敵の果肉を取り除く必要があります。果肉を取り除くには、割り箸やゴム手袋で実を潰すか、実を水につけ、水の中で果肉をむき取る、あるいはしばらく土の中に埋めて一旦果肉を腐らせてから水で洗い落とす方法などがあります。こうして果肉を取り除いたら流水で種をしっかり洗い、天日干しして下処理は終了です。

干し上がったぎんなんは茶封筒に入れてしっかり蓋をし、電子レンジで40秒~1分加熱して、数個がはじけた音がすればできあがり。あとは渋皮をむき、お好みで塩を振ってそのままいただく、また茶碗蒸しや炊き込みご飯に入れると色合いも美しく、食べるとねっとり、ほんのり苦みが効いて料理全体が引き締まります。

ただし、おいしいからと言って大量に食べるのはNG。中毒が起きる場合があるので、大人なら一度に食べるのは10粒程度にとどめておきましょう。

 

栄養価が高い上に漢方では咳止めにも

 ぎんなんには木の実の中でも炭水化物が多く含まれ(34.5g/可食部100g中。以下同じ)、その他風邪やウイルスに対する抵抗力を高めるビタミンC(20mg)、高血圧や動脈硬化を予防するカリウム(580mg)、カルシウムとともに骨や歯の元になるマグネシウム(42mg)などのミネラルが豊富に含まれています。また、肺を温め咳を止め、痰を切る作用があると言われ、漢方薬としても利用されています。

 

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ぎんなんの栄養成分

 

人に話したくなる、ぎんなんネタ

 ぎんなんの親であるいちょうは、1億5千万年前からその姿を変えず、生きた化石とも呼ばれています。もとは中国原産の外来植物で、日本には仏教伝来の頃にやってきたと言われています。いちょうには雄木、雌木があり、ぎんなんは雌木にしか実りません。街路樹として植えられるいちょうは、もちろんニオイの問題もありますが、車がぎんなんでスリップするのを防ぐため、最近では雄木が選ばれることがほとんどです。

 800本のいちょう並木が有名な大阪御堂筋では、かつては約半分が雌木でしたが、雄木への植え替えが進んでいます。ぎんなんがたわわに実っていた頃は、「ぎんなん落とし」が秋の風物詩で、落としたぎんなんを道行く人に配ったため、それを楽しみに御堂筋にやって来る人も多かったということです。しかし、最近は夜間に市役所委託の業者が落としてしまうとのことで、ぎんなん好きにはさびしい限りです。

 ぎんなんのニオイの成分は主に酪酸とヘプタン酸で、臭くすることで自らが食べられることを防いでいると言われています。酪酸はバターやチーズにも含まれていますが、ヘプタン酸はなんと、足のニオイの原因成分でもあります。しかし、ニオイが強烈なのは果肉だけで、種子部分であるぎんなんはほとんど臭わず、しかも熱を通すと殻の中から翡翠のような美しい、つやつやの実が出てきます。

 

参考:『日本食品標準成分表2010』準拠「食品成分表」(大修館書店)

 

 

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この記事を書いた人

編集部
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