ブラジル人は、肉しか食べないわけではない。南米最大の国土を持つブラジルは26の州と1つの連邦直轄区(ブラジリア)に分かれており、経済の中心となっているサンパウロやリオ・デ・ジャネイロは南東部になる。例えば音楽でも有名なバイーア州がある北東部と、南東部では3000~4000キロ離れていて食文化も大きく変わり、北部や北東部では魚料理をよく食べる。
今回は、その北部の家庭料理、ムケッカを紹介しよう。
ムケッカとは、パプリカ、トマト、玉ねぎと白身の魚、えびを合わせた魚介のシチューのようなもの。大抵、黒い陶器の鍋で作られ、仕上げにパクチーを飾って鍋のままテーブルに運ばれてくる。
リオやサンパウロ人にとって「バイーアのムケッカ」というのは、東京人や大阪人にとっての、東北の芋煮や宮崎の冷や汁のような感覚かもしれない。リオでも馴染まれて、「今日はムケッカ作ろうか」と気軽に家庭で作る料理だ。
ムケッカ
基本の作り方を紹介しよう。野菜類、魚は輪切りにする(骨ごと)。なべにオリーブ油をひき、野菜類を重ねて入れる。塩、こしょう、にんにく、オリーブ油でマリネした魚を野菜の上にのせ、水を適宜加えて火にかけ、野菜が崩れてきたら、えびを加え、パーム油とココナッツミルクを加えて少し煮て出来上がり。
そして、この汁をお玉でとって、別なべに入れ、キャッサバ粉を加えてとろみをつけたピラウンというとろみのあるソースを作り、ムケッカ、ご飯と共にお皿によそって食べる。魚を輪切りにするのが難しいので、以下、リオの家庭版レシピを紹介しよう。日本でもできる作り方なので、参考にしてみては。
【作り方】
1./赤と黄色のパプリカ、玉ねぎ、にんにくなどをミキサーにかける。えびは蒸す。白身魚はにんにく、塩、こしょう、オリーブ油などでマリネしておく。
野菜類をミキサーにかける
えびを蒸しておく
白身魚はマリネにする
2./野菜類とローリエをオリーブ油で軽く炒め、缶詰めのトマトを加え、塩、こしょうし、水を少し加えて煮る。なめらかになってきたら、ココナッツオイルとあればパーム油を加えてさらに煮る。
トマト缶と水を加えて煮る
2に魚とえびを加えてさっと煮る。キャッサバ粉があれば、別なべにスープを少し取ってキャッサバ粉を溶かしてピラウンを作る。
キャッサバ粉
魚介の汁でキャッサバ粉を溶かしたピラウン
完成したムケッカ
好みで赤とうがらしなどを添えて食べる。ピラウンは同じ色なので分かりにくいが、写真左上にかかっているとろみのあるソースだ。
市場で売られているキャッサバ芋
ちなみにキャッサバ芋は、インディオの言葉では、マニョッカ、ポルトガル語ではアイピン、アジアではタピオカという。長い航海の間枯れず、悪くならないキャッサバは、奴隷の食べ物として、ブラジルとアフリカを往復する船に常にのせられていた。キャッサバは、現在もブラジルの食には欠かせない存在で、生でも、粉としてもよく売られている。このムケッカでも重要な材料だ。
取材・文/yoko