【発酵の疑問】そもそも紅麹とは何か?

カテゴリー:ニュース 投稿日:2024.03.28

いま、紅麹が大きなニュースになっています。

当メディアでは、紅麹そのものについて基礎的なところから詳しい情報をお知らせいたします。

小泉武夫発酵文化推進機構理事長(東京農業大学名誉教授・発酵学者)によると、「紅麹菌はカビの仲間です。麹の字が付きますが、麹菌ではありません。モナスカス属のカビです。日本酒、焼酎、味噌、醤油、味醂、米酢、甘酒,酒粕などをつくる麹菌はアスペルギルス属で、全く安全な菌です。また紅麹菌は全てが悪者ではなく、その中に毒性物質シトリニンをつくるのがいて、今般の事件の紅麹菌はたまたまこの物質をつくるものだったわけです」

さらに紅麹についての基本的な情報をまとめてみました(『発酵の教科書』(金内誠・IDP出版)より引用)。

 

そもそも紅麹とは?

紅麹は,ベニコウジ菌をコメや大豆などの穀物に生育させたもの。この菌は,チーズのアオカビや味噌・醤油・酒などをつくるときに使われる麹菌類と同じカビの仲間です。実際は,遺伝的にはヒトとゴリラぐらい違い,味噌・醤油・酒などをつくるときに使われる麹菌はまったく安全です。

 

ベニコウジ菌とは?

ベニコウジ菌はモナスカス属といい,あざやかな紅~桃紅色の色素をつくります。また,モナスカス属は、血清コレステロール降下作用を示すモナコリンK という物質をつくります。このため,ベニコウジはコレステロール降下作用のための機能性食品として,あるいは医薬品として血清コレステロール降下薬として製品化されています。現在問題となっているのは,この成分が多量に入るように,菌体や培養液を濃縮させたものです。

ところが,困ったことに,ある特定のモナスカス属は、カビ毒のシトリニンを産生する菌株も存在します。この毒は腎臓に作用し,腎疾患をもたらします。カビ毒の研究は,発展途上で,まだ解明されていない部分もあり,原因究明も含め今後の研究が望まれます。

 

ベニコウジ菌がなぜ食品に?

食品は,赤の色はおいしそうに見えるという特性があります。逆に青い色の食品は食欲を抑えるといわれます。

モナスカス属は、色素をつくるので,食用色素にも使われます。紅色色素成分はモナスコルビンといい,安全です。

食品の赤色の色は,カメムシ目カイガラムシ科の昆虫から抽出したコチニールや合成の食品着色料,一般的に食紅や食品表示に赤色〇号などが書かれています。また,一昔前はタール系色素と言われていました。そのなか天然で,紅麹はイメージがよく,これまでは安全と考えられていたのが紅麹色素で多くのメーカーが使っていました。

というのは以下に示す通り400年以上前から使われていた発酵食品です。

 

1600年代に書かれた『天工開物』によると「普通に魚肉は最も腐りやすいものであるがベニコウジを薄く 塗りつけると、その品質を守ることができる。10日を経ても、ウジやハエは、近づこうとしない。つくるには稲米を用い、それは早稲でも晩稲でもよい」との記述があります。

ベニコウジには静菌作用・抗菌物質が含まれることが示されています。紅麹は食品の保存に利用することは現在でも受け継がれております。モナスカス アンカは、中国や台湾の文化を深く根付いた沖縄県では、紅乳腐や「豆腐餻」(とうふよう)といった発酵食品に用いられています。これは、食品の保存性を保つためかもしれません。また台湾では豚肉などの漬け込みに、積極的にベニコウジが使われています。また、Monascus purpureus (モナスカス パープレウス)は、中国や台湾などの紅酒製造用の麹であるアンカ(紅麹)やインドネシアの甘酒に用いられます。

 

※写真は紅麹

 

『発酵手帳 2024』好評発売中!

文庫版サイズ(厚さ1.2×横10.5×縦14.8cm)

304頁

定価:本体1,800円+税

発行:株式会社IDP出版

ISBN978-4-905130-43-7

 

◎入手方法

全国の書店やインターネットサイトなどで販売しています。

 

  •                    

\  この記事をSNSでシェアしよう!  /

この記事が気に入ったら
「いいね!」しよう!
小泉武夫 食マガジンの最新情報を毎日お届け

この記事を書いた人

編集部
「丸ごと小泉武夫 食 マガジン」は「食」に特化した情報サイトです。 発酵食を中心とした情報を発信していきます。

あわせて読みたい