『小説の主役は極上粗料理」(1)』(湯川 豊 評より)

カテゴリー:発酵仮面, 著書 投稿日:2019.02.19

小泉先生の最新刊小説『骨まで愛して 粗屋五郎の築地物語』が評判になっています。多くのマスコミにも取り上げられ、毎日新聞の「今週の本棚」(2019.1.20)でも紹介されました!

評論家・随筆家でもある湯川豊さんの書評の全文を2回に分けて掲載します。

 

 「鳥海五郎は築地市場の仲卸店につとめる、マグロを解体する「捌(さば)き屋」であった。その手際は超一流、さっぱりした気性で誰からもしたわれる。出身は現在の福島県いわき市で、家業は猟師だが、末っ子ということもあって中学卒業後、集団就職で上京し、仲卸店につとめた。

 そして看板職人になったのだが、55歳になったときに店を辞め、20年以上も心中にあたためていた夢を実現する。それが築地の町中で開いた、魚の粗(あら)だけを使った料理店で、その名も「粗屋」。

 五郎は26歳で結婚したが、ごくわずかな期間で妻に逃げられ、以来ずっと独り身。小さなアパートで好きな魚料理を自分でつくって生きてきた。

 著名な発酵学者で、多数の食文化論を書いている小泉武夫氏の小説は、そんな五郎の人生を描くのはむしろ付け足しで、「粗屋」で出すさまざまな粗料理を描くのが本当の目的ではないか。そういいたくなるほど、粗料理の書き方は生き生きとして新鮮。そういえば料理本の古典である村井弦斎『食道楽』もかたちは小説仕立てだったなと思い至った。

 ところで粗とは何か。辞書を見ると、「魚鳥獣などの肉を料理に使って、あとに残った肉のついている骨や頭や臓物」とあったりする。つまりはコラーゲン、コンドロイチンなどを含む滋養成分の塊でありながら、捨て去られる部分である。五郎はこれこそが魚の最もうまい部分と確信し、築地市場や銀座界隈(かいわい)の有名な鮨屋(すしや)などから金を出して粗を買い取り、それを美味なる1皿の料理に仕立てるのだ。

 たとえば、恩人や知友を呼んでひらいた開店記念パーティーで出されたものの一部を紹介すると――。

(続く)

 

出版社:新潮社

価格:1,404円(税込)

 

※本記事を毎日新聞社に無断で転載することを禁じます

 

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