そうだ、京都の菌塚(きんづか)に行こう!

カテゴリー:ニュース 投稿日:2017.04.29

 微生物のこと知っていますか?

 4月20日に小泉武夫センセイの著作『超能力微生物』(文春新書)が刊行されました。帯の惹句には「酵母、細菌、カビの持っている神パワーに発酵仮面が迫る!」。

 そもそも微生物とは? と聞かれて、即座に的確に答えられますか? 微生物について厳密な定義は私たちには簡単ではありません。最もやさしい答え方は、肉眼では観察できない微小な生物の総称。大きさはおおよそ1mmの500分の1から1000分の1、1万分の1。電子顕微鏡でやっと見られるサイズ。しかし、その正確な種類と数は誰にもわからない、といいます。さらにその働きとなると……。

 本書には「美味なる酒や発酵食品をもたらす微生物には謎が多い。地球上にはまだ未知の生物が無数に存在し、濃硫酸の中でも存在したり、強い放射能の被曝にも耐えられる種が新たに発見されている。人間の常識を超える微生物の正体にスリリングに迫る」とあります。

 その微生物が私たちにもたらしてくれた恩恵ははかり知れないといわれています。身近な所では発酵食品から医薬品、環境分野など、まさにFT革命(発酵:Fermentationと技術:Technology)といわれるゆえんです。

 

 微生物を供養する唯一の場所

 微生物について知れば知るほどその奥深さに驚くばかりですが、こうした微生物に対して、昭和56年5月に元大和化成株式会社取締役社長の笠坊武夫氏が、京都洛北屈指の名刹である曼殊院門跡の境内に菌塚を建立されたのです。

 

 

 「菌塚は、これら物言わぬちいさきいのちの霊に謝恩の意志をこめて建てたものであるが、同時に菌にかかわる人々が風光に勝れたこの地を 時折訪れて、菌塚に話しかけしばし頭をやすめるとともに、菌類の犠牲に報ゆる仕事をなしとげることをめいめいが約束できたら、いかにすばらしいかと思うものである」との思いがこめられているのです。

 また、題字は応用微生物学の泰斗で文化勲章を受章されている坂口謹一郎東京大学名誉教授が揮毫。菌塚の背面には「人類生存に大きく貢献し 犠牲となれる 無数億の菌の霊に対し至心に恭敬して 茲に供養のじんを捧ぐるものなり」とあります(菌塚には枯草菌(納豆菌)が祀られている)。

曼殊院門跡にある菌塚

 

 日本酒や味噌・醤油の発酵に使われるコウジ菌(ニホンコウジカビ)も微生物。日本の気候風土に根ざしたコウジ菌は、デンプンをブドウ糖に、タンパク質をアミノ酸に分解する性質が強い上に脂肪を分解吸収してくれます。

 私たちはこうした多くの微生物のおかげで豊かな食事、生活を送ることができています。機会をつくって、京都の曼殊院門跡に足を運んで菌塚に手を合わせてみませんか(毎年、5月第2日曜日に法要)。きっと、今まで以上に発酵食品、発酵への思いが募るはずです。

 

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この記事を書いた人

編集部
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