【ニッポン列島マレメシ紀行(番外編)】「都会の中のマレメシ」

カテゴリー:食情報
投稿日:2016.10.23

あらかじめ設定された場所や時間帯ではなく、勝手気ままに飲むのが好きだ。最近のマイブームは駅ナカの売店。缶ビールやチューハイを買ってホームのベンチに座って飲むのである。

「なんだ。それがマレメシか」と叱られそうだが、仕事をさぼっているような罪悪感もあり、これが結構たのしい。「都会の中のマレメシ」と言っていいかもしれない。

たとえば東京駅の東海道線ホーム。ラッシュアワーとなる夕方18~19時台は「ハッピータイム」となる。誤解をおそれずにいえば、サラリーマンたちが帰宅する景色を見ながら、駅構内のアナウンスや電車が動く音を「BGM」に飲むだけなのだが、自分だけが何物にも拘束されないような優越感に浸るという訳である。「ずいぶん屈折しているなあ」。友人が呆れていっていたが、そんな偏屈者がいてもいいだろう。

つまみはキオスクで買ったゆで卵。東京駅では1個70円。半熟と固ゆでの中間くらいのゆで具合。あらかじめ塩味が効いているのもうれしい。もちろん、さきイカや竹輪もいいが、缶酎ハイを飲む合間に卵をむくという作業がアクセントになる。

「マレメシ」というのは、遠い秘境へ行かなくても、有名な居酒屋へ行かなくても身近な所にもある。普段使っている駅でもホームでも、立派な酒飲み空間になる。しかも、あまり散財する心配がないので財布に優しい。アベノミクスの恩恵とは関係ないサラリーマンたちにとって、駅飲みは最高の贅沢かもしれない。もちろん公共の場であるので泥酔は厳禁。さっと飲んで、さっと引き揚げるのが粋な酒飲みである。

振り返れば、駅のホームには立ち食いそば屋があり、そこでビールや酒を飲めた。だが、十数年前に起きた転落死亡事故がきっかけとなり、酒が飲める立ち食いそば屋も減ってきた。

私が好きだったのは錦糸町駅(東京都墨田区)。総武快速線ホームのミルクスタンドだった。昼間はサンドイッチなどを売り、夕方には「立ち飲み屋」になった。夕暮れ時に顔を出すと、スタンド店員が「お帰り」と言って迎えてくれた。カップ酒250円。生ビールの中ジョッキが350円。女性客も多かった。「会社のストレスは全部ここでパーッと発散しちゃう」と言っていたっけな。

都会の中の「マレメシ」。錦糸町駅のホーム居酒屋がなくなってもう十数年になる。

※トップ写真は錦糸町駅のホーム居酒屋。店内は数坪の広さでかっぽう着姿のおかみさんが出迎えてくれた(2002年撮影)

 

豪流伝児(ごうるでん・がい)/東京・新宿ゴールデン街をねぐらに、旅と食、酒を人生の伴にするライター。

 

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編集部
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