日本最古の漬け物とは?

カテゴリー:漬物 投稿日:2015.10.27

日本人のソウルフード・漬け物
 沢庵、白菜漬け、梅干、らっきょう、きゅうりやなすの糠漬けに昆布やごぼうの味噌漬け……、日本には数多くの漬け物がある。各地で生産される野菜や気候、習慣に合わせて生まれたものだ。一夜漬けも含めて考えれば、それこそ家庭ごとに味があるといってもいいだろう。

 

一番古い漬け物?
 私たち日本人は漬け物をいつ頃から食べ始めていたのだろうか。
 といっても歴史が古すぎて明らかにはできないが、海水に野菜類を漬けたものや、塩漬けなどは縄文時代から食べていたとされる。
 最も古い公式の記録としては、平安時代『延喜式』(※)に、なずな、わらび、せり、瓜、大根、なす、みょうがなどの漬物がある。これらは、塩のほかみそ、しょうゆ、酒粕などに漬けており、私たちが現在食べている漬け物とほぼ変わらないものが、当時すでに食べられていたことがわかる。
 さらに、1986年からの奈良の長屋王(ながやのおう)の邸宅跡の調査で発見された木簡には、「加須津毛瓜」「加須津毛奈須比」「醤津毛瓜」などの記載があった。「加須」は「粕」、「津毛」は「漬け」とされている。醤は当時大豆、米、麦などから作られていた現在の醤油のルーツである調味料なので、瓜やなすの粕漬け、瓜の醤油漬けがあったことがわかる。
 もちろん、当時の瓜は品種改良が進んだ現在の瓜とは違ったものであったはずで、また漬け方の違いなどもあるので、現在の瓜やなすの漬け物と同じだとはいえない。
 ただ、漬け物を奈良や平安の貴族たちも賞味していたと考えるとロマンがあるではないか。

 

漬け物の健康効果
 さて、漬け物がそれほど古くから食べられ続けてきたのにはわけがある。
 まず、保存食として。野菜不足になりがちな冬季でも食べられるよう、保存する知恵であった。そのため、昔の漬物は現在のものと比べ総じて塩分濃度が高かった。
 次に、漬け物の健康効果。例えば、たくあん2切れ(約40g)で1.4g、らっきょう5個(約30g)で0.4gの食物繊維を含んでいる。食物繊維1gを摂るためにレタスで90g食べなければならないことを考えると、ずいぶん効率がよい。これは、塩分の作用で野菜の水分が抜けることによるが、水分が抜けたところへ糠や粕からビタミンやミネラル類などの栄養成分が移ることも見逃せない。
そして、乳酸菌を代表とする微生物も含んでいる。これらは、腸に届いて腸内のいわゆる善玉菌を増やすのに役立つ。
 漬け物は天然の整腸剤ともいえる、日本人の知恵の宝庫なのである。

 

※延喜式……平安時代の律令の施行細則を記録したもの。

参考:『食に知恵あり』(小泉武夫、日本経済新聞社)、『食の考古学』(佐原真、東京大学出版会)、「日本食品標準成分表2010」)

 

 

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編集部
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