【世界の発酵食通信】馬乳酒

カテゴリー:酒
投稿日:2016.04.05

馬乳酒とは馬の乳を発酵させた飲料で、中央アジアやモンゴルのエリアに暮らす遊牧民族の伝統的な飲料のこと。

馬乳「酒」というが、アルコール度数は1%前後。白いサラサラとした液体で、微発泡。実際に飲んでみると、強い苦味と酸味、コクがありすぎてキレはなく、喉越しはドラマティック。不思議とクセになるかすかな腐敗臭はまさに発酵がもたらす旨みそのもの。

この飲料の最大の特徴は、ステップ気候(乾燥型気候)の標高の高い草原で、夏の間にしか作ることができないことだろう。夏になると、山に生えた良質の草を家畜に食べさせるために、彼らは草原に遊牧民族の可動式住宅であるボズ・ウイ(ユルタ)を立て、家畜の群れを飼う。

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馬乳酒の原材料は、その名の通り馬の乳。馬の乳は早春に出産をした雌の馬から夏の時期にだけ採れるもの。雌の馬が仔馬に授乳する時に、先に仔馬に吸わせて乳が出たら、そのあと人の手で横取りをして絞る。一回の乳しぼりで一頭から200mlほどしかとれない貴重なものだ。複数の馬から一日に6回ほど搾乳を繰り返し、これを夏の間の毎日の仕事としていく。

ちなみに、この搾りたての生の馬の乳を飲むのも体に良い。ステップ気候の草原は寒さの厳しい冬が長いため、肉を中心とした食生活の遊牧民族はビタミンが欠乏しやすい。馬乳酒はそんな遊牧民のビタミン・ミネラルの補給源となっており、特にビタミンCは豊富(牛乳の6倍)に含まれる。その他にも内臓のクレンジング、腸内環境の調整などの効果も。気候と風土が生んだ素晴らしい伝統的な飲み物である。

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さて、この搾りたての馬乳を、ボズ・ウイ(ユルタ)の中にある大きな専用の樽にすぐさま入れ、木の棒で何回どころか、何百回・何千回もかき混ぜる。シーズン最初の時は、昨年から冷暗所で保存しておいた馬乳酒を少量入れ、スターター酵母として活用する。棒でかき混ぜている間に発酵が始まり、馬乳酒の完成となる。作り方は非常にシンプルであるが、時間と根気が要るのだ。

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馬乳酒は草原から遠方に持ち出すと、たちまち劣化して成分が変化し、すぐさまお腹を壊す飲み物に早変わりしてしまうため、日本ではまず飲むことができない。これが遊牧民族の草原でしか体験出来ないのは本当に残念だ。

取材/文:市川亜矢子

 

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編集部
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