新春特別対談(中編)!小泉進次郎+小泉武夫

カテゴリー:発酵仮面
投稿日:2016.01.04
いま最も期待されている若き政治家、小泉進次郎さんと小誌の総合監修、小泉武夫の「W小泉対談」をお届けいたします。お二人はともに日本の未来を見据えた志(こころざし)の人。談論風発の一部始終を3日間連続で配信します!
 

和食のユネスコ世界遺産と宿題

進次郎 先生が書いた鯨に関する本を読んで、日本という国と鯨の深い食文化についてその通りだと思いました。ぼくの地元の浦賀にペリーが来て日本に開国を迫りましたが、目的はアメリカの捕鯨船に水や食糧を補給するためだったでしょう。たくさんの鯨を捕って、脂を取ってしまえば後は全部捨ててきた国が、いまや鯨を食べる日本はけしからんと声高に言っているわけです。食文化については鯨に限らず他国のことを単純にあれこれ言ってはいけないと思うんです。

 

武夫 まさにその通りだと思います。わたしはいま、沖縄と日本政府がうまくいってないので、食文化で間を取りもとうとしているんです。ユネスコの世界遺産に登録された和食の中に琉球料理がいっしょくたにされているけれど、琉球料理のことはほとんど記されていません。そこでわたしが琉球料理の良さについて書いたところ、地元で機運が盛り上がってきました。だからいま沖縄県民が一体となって琉球料理と泡盛を世界遺産に登録しようという運動を始めています。

沖縄県知事の翁長雄志さんも県議会も今それに取り組んでいます。沖縄県と日本政府が食文化で交流し、お互いに仲良くやっていければいいと願っています。

 

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琉球料理の豆腐よう

 

進次郎 先生のキャッチフレーズは、まさに「食あるところに小泉先生あり」ですね。

 

武夫 食だけでなく、「食と酒あるところに小泉武夫あり」ですかね(笑)。

 

いま「本性」が試されている

進次郎 もう一つお聞きしたかったことは、人間の「本性」についてなんです。この前、NHKのテレビドラマで、歴史的に偉大な人たちを取り上げていました。二・二六事件で暗殺された高橋是清から始まって、次に阪急電鉄の創業者の小林一三、その次が電力王と呼ばれた松永安左衛門。その小林一三のドラマを見たときに、印象に残った言葉がありました。当時、総理大臣だった近衛文麿から大臣になれと言われて民間から大臣になった。それで官僚とぶつかるんです。官僚は統制経済をやりたかったけれど、小林一三は民間の力が大事なんだと言って闘った。そのとき小林一三が官僚に対して言ったのは、「君らの考えは人間の本性に合っていないんだ。人間の本性は欲だよ。我欲だよ。頑張って働けば給料が上がるとか、自分の子どもを大学に行かせてやりたいとか、世間に認められたいとか、それが欲なんだ」と言うんです。ちっぽけで切実な希望、頑張れば叶うんだというのが欲なんだ。これに合っていないものはダメなんだと。ぼくはいまの日本はこれを忘れちゃいけないと思う。世界経済になると難しい話だけれど、基本的には物を買いたい、消費したい、そんな人間の「本性」に訴えるようなことをやらなければ経済は回っていかない。

 

武夫 その「本性」の話をすると、以前、NHKの「課外授業 ようこそ先輩」という番組でギャラクシー賞をいただいたことがあります。その番組内で子どもたちに腐った物と発酵した物を与えると、何も教えないのに子どもたちは腐ったものには、危険を感じて近寄らなかったけれど、発酵した物は食べました。それはDNAに受け継がれていることなんですね。これも食にまつわる「本性」なんだと思います。

 

進次郎 小さいうちに納豆を食べさせると、その後の味覚はどうなりますか?

 

武夫 その後もずっと味覚は形成されます。なぜかというと、育ち盛りの赤ちゃんにしてみれば納豆ほど栄養のあるものはありませんから体が要求するんですね。

 

進次郎 いままさにいろいろな世界で、人間の「本性」が問われているんじゃないかと思います。社会は複雑化しているけれど、人間の「本性」を忘れていると世の中は回らなくなっちゃう。

なんで日本はこんなに子どもができない国になったのか。複雑化した世界だからこそ、還ってくるところはシンプルでなければならないと思うんです。ぼくは小泉先生が言うことにすごく共感するし、この先生が常々おっしゃっていることは、人間とは何ぞやという本質を突いていると思っています。

最近、別の部分ですごいと思ったのは、京都大学総長の山極寿一先生。山極先生がおっしゃっていたのは、「人間とそれ以外の動物の違いは、人間以外の動物は一度ある集団に属すると、その集団にしかアイデンティティ(自己同一性)を持てない。しかし、人間はいくつもの集団にアイデンティティを持つ」というんです。だから本来、人間というのは特定の小さな組織や地域にとどまり続けることは合っていない。だから若者を含めて小さなところにとどまるのではなく、好きなところに行けばいい。そして帰ってくるところが自分の故郷だったら、こんなに素晴らしいことはないとおっしゃっている。その通りなんです。

 

武夫 わたしが書いた『小泉武夫のミラクル食文化』をお読みになりましたか?

 

進次郎 いや、まだ読んでいません。

 

武夫 そこに書いたんだけれど、人間同士の闘いがなぜ始まったのか。縄張り争いで闘うんだけれど、縄張りは食べ物を確保するテリトリーでしょう。そうすると闘いの原点は食べ物なんです。それは生きるためです。それには1人で食べ物を採るよりも、3人、10人、100人で採ったほうがいい。それが原始国家の成立。原始国家にはいろいろな階級ができて、内部で勢力争いが起こる。頂点に立った者にとって、何が自分を守ってくれるかというと、人間を超越した神様の存在です。神様の庇護(ひご)を受けて自分が集団を統率しているし、食べ物を得てみんなに分け与えることができる。そういう世界で人間の性とか欲望だとか「本性」がつくられたというのがわたしの説。わたしがそこで強調しているのは原始宗教です。原始宗教で一番偉い神様は太陽。日本の国旗を見てください。日の丸は太陽でしょう。丸い太陽。丸いものには絶対的な力があるとされています。ムスビという字は「産巣日」と書く。だからオムスビは三角じゃだめで、丸くなくちゃいけない。ムスビは真ん丸で、霊力が宿っているから、すべてのものがそこから出てくる。丸い物には霊力があるから鏡餅は丸いんです。お酒の樽も丸い。豆も丸くて霊力があるから、節分には「鬼は外、福は内」ってまくでしょう。

 

進次郎 ムスビってすごいんですね。産も巣も日もみな生まれるんですね。

 

武夫 だからオムスビをオニギリと言ってはならない。オニギリは平安時代の女房言葉。日本は世界で最初に太陽が出る国。日本の日の丸は力の根源なんですね。

 

進次郎 人間の「本性」を改めて問い直したほうがいいですね。

 

武夫 そうです。本性を問い直さないと正しい子ともたちへの教育もできなくなる。

わたしに言わせれば、本当の食育は何を食べさせるかではなくて、子どものために何をつくるかなんです。いまは大人も子どもも、食べることの意味をほとんど知らない。「何で食べているの?」と訊くと、腹が減っているから食べているというだけですよ。それで子どもに「食べた物は何になるの?」と訊くと、ジーッと考えて「ウンチになる」って。それでは人間はウンチをつくるために生きていることになる。人間はウンチ製造器ですか。そうではない。食べることは物をつくることです。その原点を小さい頃に教えておかないと、人間がウンチ製造器になっちゃう。本質を押さえないで結果論ばかり言っているからダメなんです。

 

大人の食育とは

進次郎 大人に対する食育はどうしたらいいでしょうか?

 

武夫 基本的には和食を食べること、食べさせることです。日本人には民族固有の遺伝子があるんです。アングロサクソンやゲルマン民族とは全然違う遺伝子がある。人間には2種類の遺伝子があり、そのひとつは日本人の場合は生まれたときにお尻に青い班があるように。これが民族の遺伝子。いま一方は、顔が一人ひとり違うのはお爺ちゃんやお婆ちゃん、お父さんお母さんからの家族の遺伝子です。その民族の遺伝子というのは、今日、昨日、一昨日できたわけではなくて、3000年以上の日本人の生活環境に適応して、そこで生きられるように遺伝子が組み込まれているんです。その遺伝子の中にいま言った和食が組み込まれているのです。この60年くらいで肉を食べすぎたり、油を摂りすぎて生活習慣病が出るのは遺伝子が適応していないわけだから当たり前のことですね。長いこと日本人は7つの食材しか食べてこなかった。根菜、菜っ葉、果物、山菜やキノコ、大豆などの豆類、海草、穀物。

いまから80年前まで、日本人はこの7種類しか主に食べてこなかった。肉だって牛乳だってあまりなかった。たまには魚や鯨を食べていたけれど、この7つは全部が植物。わずか60年で食生活は激変したけれど、遺伝子はそう簡単には変わらない。たとえばウサギは草食だけれど、肉を食わせたらウサギはおかしくなっちゃう。ただ肉を食べるな、と言っているのではなく、ちゃんと野菜をとってミネラル補給をしながら食べよ、と言っているのです。人間もそれと同じで、肉ばかり食べているとミネラルが消費されてしまう。ミネラルが不足すると平衡感覚(へいこうかんかく)がおかしくなって、アドレナリンが出やすくなる。植物はミネラルが豊富だ。昔はみんな温厚だったけれど、肉食に偏ってくると粗暴な犯罪が増えてくる。みな怒りやすくなって、生活習慣病も増えてきた。だからわたしは内閣府の食育活動の委員として、昔からの日本人のための日本人の食事を再評価しようと言ってるんですよ。

 

進次郎 和食が世界無形文化遺産に登録されましたが、ますます和食を伝えて行かなくてはならないですね。

 

武夫 和食というのはもともと心と体に優しい食なんですよ。それが戦後、心が沸き立って、体も刺激されて、西洋料理に目が向く世界になったものだから、本来の日本人の心と体が対応できなくなっているのだと思います。

 

進次郎 病気も増えています。元女子プロレスラーの北斗晶さんが乳がんの手術をしたけれど、乳がんの発生率がものすごく上がっているんです。ある調査データによると30年前は乳がんの発生率は30人に1人だった。いまは12人に1人になっています。医療に詳しい人は、やはり食の欧米化が進んでいて、それが影響しているのではと言っています。

 

武夫 まったくその通りです。私もいろいろの本に書いてきましたが、遺伝子が耐えられないんですよ。かつて沖縄が医食同源の食生活をしてきたので長寿県でしたが、昨今ものすごく変わってしまった。厚生労働省のデータによると、以前は平均寿命は全国一だったのが、いまや男性は全国30位、女性は4位に転落です。肉の食べ過ぎ、とくにアメリカが持ち込んだ肉の缶詰を毎日のように食べている。それは沖縄の人の遺伝子に合わないわけです。沖縄がそうなんだから日本全国同じことなんです。日本の医療費がどんどん増えていまや30兆円を越しているのですよ。

 

進次郎 国の予算の3分の1が社会保障関係費です。

 

武夫 食生活を和食に変えると、医療費がいっぺんに減りますよ。わたしは日本全国どこでも行って、これを言い続けて言るのです。いまからでも決して遅くない。

 

進次郎 このままでは医療費が持たないからと言うのではなくて、健康を取り戻そうという前向きな考え方ですね。

 

武夫 わたしはそれで『いけいけビンビン和食生活のすすめ』という本を書きました。

 

進次郎 すごいネーミング!

 

武夫 ネーミングといえば、『絶倫食』という本も出しました。冒頭から大昔の中国の王様の話なんですけど、文献によると37人の子をつくったというので調べてみてびっくりしました。

王様付きの医者の勧めで、元気な10代の男の子を100人集めて、性的に興奮させてオシッコをさせる。そのオシッコのエキスを飲むと精力絶倫になったと記録されているんです。そこにはテステステロンという性ホルモンが入っているからだ、という医者もいました。

 

進次郎 えーっ、そうなんですか!

ところで、和食が世界無形文化遺産に登録されましたが、小泉武夫先生がイメージしているものと違うんじゃないですか。

 

武夫 わたしは和食の世界無形文化遺産の政府検討委員会委員もやりましたが、世間で喧伝(けんでん)されている和食と本来の和食では相容れないところがあります。精神的なものと、肉体的なものとが調和して、初めて和食が成立するのです。このへんについてはあまり論じられていませんが、和食には見えない世界を食に取り入れるのが日本なんです。見えないものを味わう。心で味わうわけです。たとえば侘(わ)び寂(さ)び。例えば茶道は見えない哲学の世界を味わい感じ取っているのです。

みんなは気がつかないけれど、わたしが考えているのは、人が口にするものは水と塩以外は全部命があるものでしょ。「いただきます」というのは、生命を持っていた食べものに対して、「あなたの命をいただきます」ということなんです。日本人が昔から持っていた食に対する姿勢を、和食で見直したほうがいいんです。

 

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進次郎 生き物は水と塩がないと生きていけないので、命のない水と塩も生命の原点ですね。

 

武夫 まったくその通り。人間は無生物によっても生かされているんだから、人間が死んだらそのミネラルになって還ってゆく。

 

進次郎 日本人は水の大切さを改めて考え直さないといけないですね。この前、フィリピンに行って思ったのは、日本では蛇口をひねって出てくる水道水を安心して飲めるのはすごいことです。世界でも珍しいってことを。ぼくらは当たり前だと思っていますが。

 

武夫 わたしの生まれた町(福島県小野町)はとても小さいのですが、わたしが中心になって「全国地下水サミット」を先日やってきました。そこでわたしは基調講演で「始めに水ありき」という話をして参りました。地下水のことは今こそみんなで考えないといけない。しかも福島県は風評被害が大変なんです。人間にとって地下水は大切ですから。

 

進次郎 ぼくは福島県の金山町に行ったときに天然の炭酸水に出合いました。それであちこちで言っているんですよ。本州で天然の炭酸水は福島県金山町だけだと。天然の湧き水でハイボールができるのは、ここだけだと。

 

武夫 町の人たちは喜びますよ。新潟県に近いところで、かなりの山奥ですけれど。

 

(後編に続く)

 

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この記事を書いた人

編集部
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