日本で唯一、漬物を祀る神社の意外な由来

カテゴリー:食情報 投稿日:2018.07.12

愛知県あま市に、日本で唯一、漬物を祀る神社「萱津(かやつ)神社」があります。毎年8月21日には香之物祭(漬物祭)が行われ、漬け込み神事を行い、漬物文化の興隆を祈ります。

 

漬物の始まりの言い伝え

萱津神社がある場所は、かつては海に面しており、濃尾平野の肥沃な土地でした。人々は土地で獲れたウリやナス、海から得た塩を神前に供え、五穀豊穣を祈りました。せっかくの供物が腐ってしまうのを惜しんだ里人が、社殿の傍らに甕(かめ)を置き、その中に供物を入れたところ、発酵してほどよい塩漬けとなりました。人々はその味を神からの賜わりものとして、万病を治すお守りにし、保存食として蓄えたそうで、これが我が国の漬物の始まりと言い伝えられています。

萱津神社の入口

 

日本武尊の故事に登場

日本武尊(やまとたけるのみこと)が萱津神社に立ち寄った際、村人が献上した漬物を食し「藪二神物」(やぶにこうのもの)」と仰せられ、たいへん喜んだ、という故事があります。

尊が熱田の地に祀られた後は、熱田神宮の歳旦、祈年、新嘗、例祭の四祭に香の物が献進されるようになり、現在に受け継がれています。

 

日本で唯一の漬物のお祭り

香の物祭には氏子や漬物業者などが集います。「香の物殿」という小さな社の前に、カリモリ(愛知特産のウリの一種)やナスなどの野菜が並べられ、神事の後、参列者がそれらの野菜を塩一掴みとともに甕に漬け込みます。この祭りは、全国唯一の漬物の祭礼として、あま市の無形民俗文化財に指定されていて、一般の方々も参列できます。

今年の「香之物祭」では、昨年に香の物殿で漬け込まれた漬物を地元の婦人会や愛知県漬物協会の有志らが漬け直し、お茶漬けにして参列者にふるまわれるそうです。

漬物が納められている「香の物殿」

 

香之物祭が8月21日に行われることにちなみ、漬物業界は毎月21日を「漬物の日」と定めています。

 

漬物をモチーフにしたお守り

神社内にある萱津会館には、「つけものミュージアム」のコーナーがあり、漬物の健康効果やミニ知識、日本全国の漬物リストなどのパネルを展示。また、ぬか床や沢庵の味噌漬け、キュウリの奈良漬、ヤマゴボウのしょうゆ漬け、ナスをモチーフにしたお守りなども販売し、漬物のPRに努めています。

漬物についての解説パネル

 

ぬか床や漬物を販売

 

漬物は日本の宝

青木知治宮司は「生の野菜を長期保存し、おいしくいただくために、神の思し召しと人の技によって漬物は生まれました。米、味噌とともに日本の食文化の根幹をなすものです。昔は食べ物が少なく、神の物としてありがたく食しておりましたが、現代人も漬物の恩恵をよく知り、感謝の心をもって召し上がってほしいと思います」と話しています。

つけものミュージアムで青木宮司

 

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この記事を書いた人

編集部
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