実質平均寿命と健康平均寿命【小泉武夫・食べるということ(29)】

カテゴリー:食情報
投稿日:2017.12.13

健康平均寿命とは

 平均寿命の考え方には、2種類あります。私たちが普段、テレビのニュースや新聞で見聞きしている平均寿命というのは、「実質平均寿命」のことです。これは、生まれたばかりの0歳児が、あと何年生きられるのかを統計的に算出したもの。単純に長さを示したもので、“質”までは問うていません。

 一方、ヨーロッパ諸国を中心とした西洋では、「健康平均寿命」という考え方が定着してきています。これは、年をとってからも病気にならない人がどれくらいいて、その人たちが何歳まで生きられるかを調べたもの。心も体も健康な状態にある人の平均寿命なのです。たとえば、体が弱って自分一人では食事や入浴などの日常生活が送れなくなってしまった人や、体は健康でも認知症と診断されたような人は、「健康な状態」にカウントされません。私が先に指摘した表現を使えば、健康平均寿命とは、心も体も元気な人が何歳まで自分の意思でいろいろなことに参加できるのかを示した数値なのです。

 さまざまな本を調べてみると、健康平均寿命がもっとも高い国々は北欧です。社会福祉が充実している北欧の国々は、豊かな老後を送れているお年寄りも多く、ベルギー、フィンランド、ノルウェー、デンマーク、スイスなどが健康平均寿命の高い国だと言われています。

 

日本人の健康平均寿命

 では、日本はどれくらいなのか。残念ながら、日本にはヨーロッパと同じ方式で調べた統計データがありません。ですから比較はできませんが、おそらく北欧諸国よりはずっと下になると私は考えています。それでも実質平均寿命は高いという現実は、あえて言うならば、豊かな人生を謳歌できていないお年寄りが、日本にはたくさんいるということになるわけです。

 日本の医療技術の進歩は素晴らしいものがあります。しかし皮肉なことに、そのことによって、健康を損ねても入院や通院をしながら高齢まで達することができるのです。日本人は、ある意味で、楽しく長生きしているのではなく、なんとか生かされている、と言ったら、言い過ぎでしょうか。大切なのは、「病気になってからどう生きるか」ではなく、「心も体も健康なままで生きる」ということ。それこそが、豊かな人生を歩むために不可欠な考え方であるはずです。

 長生きはできるのに、豊かな老後を送れなくなってしまった日本。私たちが本当にやらなければならないのは、実質平均寿命世界一を誇ることよりも、健康平均寿命を誇れる国を目指すことなのです。

小泉武夫

 

※本記事は小泉センセイのCDブック『民族と食の文化 食べるということ』から抜粋しています。

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