農業の再生に必要なのは若い力【小泉武夫・食べるということ(17)】

カテゴリー:食情報
投稿日:2017.09.20

農業従事者の高齢化

 地産地消の意義を考えるとき、忘れてはならないのが地域経済の発展です。もっと具体的にいうなら、 “農を基盤とした経済循環システム” が実現できるということです。

 日本が農業を大切にしてこなかった結果、日本の農業の現場は、目を覆いたくなるほどまでに衰退しています。はっきり言って、農業は夢や希望が感じられない産業になっているのです。だから後継者もいなくなってしまいました。

 今、日本の就農平均年齢は66歳です。サラリーマンであれば、定年後の人たちです。これだけ農業従事者が高齢化した国は、世界中どこにもありません。食べ物がない、食料自給率を上げようと言いながら、農産物の生産を高齢者に委ねているのが日本の食の現状なのです。

 農産物をつくる土地は十分にあります。ただ、つくる人がいないために、多くの田畑が野ざらしにされているのです。日本の工作放棄地の総面積は、39万9000ヘクタール。これは、埼玉県よりも広い面積です。それだけの耕作地を放棄したままで、食料自給率など上げられるはずがありません。

 

若い人の力が大切

 私は、若い人たちの力がもっと農業に反映されない限り、日本の農産物の生産力を向上させる道はないと思っています。そのためには、誰でも一度は農業を経験してみるべきだと、私は考えています。それが前々から言っている「徴農制」です。

 農業は、土まみれになりながらの肉体労働で、きつくて、毎日同じ作業の繰り返しで、おもしろくないと思っている若者も多いことでしょう。しかし、農業は生命維持産業の根幹なのです。素晴らしい仕事であり、真剣に向き合えばやり甲斐も実感できるはずなのです。

 やりもしないうちから「やりたくない」では話になりません。高校生くらいから24、5歳までの間に、男性も女性も一定期間農業の担い手となるような制度があってもいいのではないかというのが、私のかねてよりの提唱です。若い人たちは、日本は自分たちの国であり、また自分たちの子どもも生きていく国なのです。それゆえに、自分たちの食べものを、高齢者に依存するのではなく、自分たちの手でつくるのが当たり前なのです。また、派遣中の学生には単位として教育的配慮をし、会社員には国が給料の手当てをするなど、社会全体がこのシステムを見守ってあげることが大切です。戦争を放棄した日本に徴兵制はあり得ませんが、日本を救うためには「徴農制」があってもいいと私は考えます。それほどまでに、日本の農業は危機にさらされているのです。

小泉武夫

 

※本記事は小泉センセイのCDブック『民族と食の文化 食べるということ』から抜粋しています。

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