お坊さんの長寿食【小泉武夫・食べるということ(13)】

カテゴリー:食情報 投稿日:2017.07.15

 病気になりにくい職業とは

 最近の研究で、おもしろいデータがあります。職業と罹病率(りびょうりつ)の関係を調べたものですが、日本人の中で、もっとも病気にならずに長生きできる職業は何だと思いますか?

 仕事の種類についてはいろいろな分け方がありますが、セールスマンや事務職、学校の先生、お医者さん、自動車の運転手など、一般的なものを大別すると約40種類に分けることができます。その中で、罹病率が一番低いのはお坊さんだということです。確かに僧侶が病気になり、長く入院しているなどということを耳にしたことはありません。

 では、僧侶の食生活はどのようなものなのか。全てのお坊さんがそうだとは言いませんが、昔からお寺の食事は質素なことで知られています。殺生(せっしょう)は禁じられていますから、肉だけではなく魚や卵も口にはしません。基本は菜食。修行僧は一汁一菜(いちじゅういっさい)と決められています。

 欧米の人からは、「栄養不足だ、もっと動物性タンパク質をとれ」と指摘されそうですが、肉や魚を食べなくても、生きていくために必要なタンパク質は、大豆などから豊富にとることができます。質素な菜食を続けているからといって、お坊さんは栄養失調で死んだりはしないのです。

 

 カロリーよりも大切なこと

 カロリーで比較すると、そのような僧侶の食事は、おまわりさんの食事の2分の1にしかならないと思われます。栄養学では一般的な成人男性が一日に必要なカロリーは2500キロカロリー前後(女性は2000キロカロリー前後)といわれますが、僧侶のそのような食事はそれを大きく下回っているのは容易に考えられるのです。とにかく、その程度の食べ物で日本人は健康を維持し、なおかつ長生きができるということを僧侶の食生活は証明しているわけです。

 男性は約2500キロカロリー、女性は約2000キロカロリー、毎日それだけのカロリーをとらなければ健康になれないと思っていたら、日本人は間違いなく栄養過多になってしまいます。健康のために必要なのは、自分の遺伝子を作ってきた日本型食文化を大切にする考え方。それを忘れてはいけません。

小泉武夫

 

※本記事は小泉センセイのCDブック『民族と食の文化 食べるということ』から抜粋しています。

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編集部
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