【小泉武夫・食百珍】東と西の粋

カテゴリー:食情報
投稿日:2017.07.09

 鰻料理の違い

 鰻(うなぎ)料理ひとつを例にとっても、関東と関西には面白い違いがいくつかある。

 使う鰻は関東は細め、関西は太めを選び、関東では背開き、関西では腹開きにし、竹串を打って白焼き(素焼き)にする。関西ではその白焼きにタレをかけながら付け焼きとする長焼きものであるのに対し、それでは脂肪が強すぎるうえ、皮も硬いというので蒸して脂(あぶら)をぬき、軟らかく仕上げてからタレで付け焼きするのが関東。鰻めしでも、関東は蒲焼きを飯の上にのせたものに対し、関西では「まむし」と称して、蒲焼きを飯の表面と中とに二重に入れたり、小さく切って飯に混ぜたりする。

 醬油でも東は濃口(こいくち)であるのに、京阪神を中心とする西では淡口(うすくち)である。淡口の場合、大豆の蒸し方と小麦の炒り具合に加減が加わっているから、濃口に比べ、色と味が薄く、料理材料の持ち味や色合いと「ダシ味」を生かせる関西人好みの醬油となっている。

 味噌は関東が赤味噌系に対して、関西は白味噌系。関東は三度の食事に味噌汁を常用するから、赤味噌のように毎日飲んでも飽きのこないものが好まれるのだろう。また、白味噌は淡色でなめらかな味を好む関西人にピッタリ似合うというものである。

 ほかに関西では、うどんが主で蕎麦(そば)は副。関東ではその逆。鮨(すし)では東は握った飯に山葵(わさび)をつけ、これに魚介をのせた握り鮨だが、西では筥鮨(はこずし)や巻き鮨が主体。そして、その食べ方ひとつにも違いがあり、例えば関東人が巻き鮨に醬油をつけて食べるのをみて、関西人は不思議がる。

 

 青ナマコと赤ナマコの差

 料理に使う魚とて、東は鮪(まぐろ)や鰹(かつお)に代表されるが、西は鰤(ぶり)、甘鯛、鱧(はも)などに根深い人気をもつ。そして、最もグロテスクな姿のナマコにまで、好みに大きな差があり、関東は肉の軟らかな青ナマコに対し、関西は硬めの赤ナマコ。肉も東は豚肉が多く、西は牛を好む。和菓子や煎餅(せんべい)も東と西とでは味も形もその好みは大分異なる。

 このように、身近な食べものの例をあげてみただけでも、関東と関西には明確で面白い違いがある。この違いは、食べものや料理の材料のみならず、味付けの仕方、ダシのとり方、盛り方などにも細かな違いがかなりある。驚いたことに、魚屋の店頭に並ぶ魚まで、東は多くが横向きに並べてあるのに対し、西では縦並べが目につく。

 料理は、昔からその土地に育った材料で、その土地の人々の生活に合った味に調理され、それが長い間、かたくなに守られてきた。その現れが、東や西、北や南の嗜好性の差なのである。今日、東京の街を歩けば、関西割烹の看板がはんらんし、大阪にも江戸前の握り鮨屋や鰻屋、おでん屋がどこにでもある。そういう店に行くと、そのほとんどが、やはり看板どおりの料理と味を出してくれるから、たいそううれしいものである。プロの料理人としてのプライドがそうさせるのだろうが、彼らはそこには、東西料理の本質的違いが、「東の粋(いき)」と「西の粋(すい)」であることを、知りつくしているためなのだと思えて仕方ない。

小泉武夫

 

\  この記事をSNSでシェアしよう!  /

この記事が気に入ったら
「いいね!」しよう!
小泉武夫 食マガジンの最新情報を毎日お届け

この記事を書いた人

編集部
「丸ごと小泉武夫 食 マガジン」は「食」に特化した情報サイトです。 発酵食を中心とした情報を発信していきます。

あわせて読みたい